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フィスコ投資ニュース

配信日時: 2025/12/12 10:14, 提供元: フィスコ

明和産業:中国を中心としたアジアネットワークを武器に持続成長を目指す専門商社

*10:14JST 明和産業:中国を中心としたアジアネットワークを武器に持続成長を目指す専門商社
明和産業<8103>は、旧三菱商事の化工品部門の流れを汲んで1947年に設立された専門商社である。50年代から進出している中国向け事業に強みを持っており、現在も売上の約3割を同地域が占める。加えて東南アジアやインドへも積極展開しており、資源・環境、石油製品、高機能素材、電池・自動車を柱とする多様な事業ポートフォリオを構築している。主要仕入先は三菱ケミカルグループやENEOSなど大手化学メーカーや石油会社であり、安定供給体制の下でBtoB取引を拡大してきた。直近では、環境対応型の冷凍機油など付加価値の高いニッチ市場向け製品や、安全分野での用途拡大が進む難燃剤などを主力としつつ、電池材料など成長分野にも注力している。

同社の強みは、第一に中国政府から「友好商社」に指定された歴史があるように、国内トップクラスの中国ネットワークを持つことである。中国に進出した日系企業との取引を多く担っており、現地に多くの営業拠点及び物流拠点を構え、取引社数は1,100社を超える。中国系企業との取引比率も直近10年で大幅に上昇し、現地スタッフ100名以上を擁することでネットワークを維持・拡大している。長年の実績から中国企業からの信頼も厚く、中国企業が東南アジアやインドに進出する際に提携を持ち掛けられる事例も生まれている。第二に、設立以来75年以上にわたり培った商社機能と化学品を中心とする幅広い取扱いノウハウである。環境対応型製品やサステナブルな商材にも精通し、社会的ニーズに即した事業展開が可能である。第三に、環境・安全に直結するニッチ分野での製品力である。代表例として、ENEOSと共同で開発した環境配慮型の冷凍機油や火災防止に寄与する難燃剤が挙げられ、特に難燃剤は国内で一定のシェアを確保しているほか、中国および東南アジア市場でも販売を拡大しており、アジアを中心にプレゼンスを高めている。

2026年3月期第1四半期の連結業績は、売上高38,828百万円(前年同期比2.3%減)、営業利益1,441百万円(同84.7%増)の減収増益となった。資源・環境や電池・自動車が堅調に推移した一方、石油製品や高機能素材は市況悪化や需要反動減があり売上高は微減となった。しかし難燃剤事業において原料のアンチモンが高騰し、販売価格も大幅に上昇したことで大幅増益を達成した。米関税影響などを見据え、通期予想は売上高160,000百万円(前期比2.1%増)、営業利益3,200百万円(同10.3%減)を据え置いているが、第1四半期の営業利益進捗率は45.0%と堅調である。

今後の成長見通しとしては、中期経営計画においてモビリティ・環境・生活を注力領域に掲げ、持続的成長と新規事業の創出を目指している。定量目標として2026年3月期に連結純利益26億円(直近公表の目標30億円)、ROE 7%以上(2025年3月期実績8.8%)を掲げており、稼ぐ力の強化を軸に据える。重点施策としては、(1)中国五鉱グループおよびトヨタと共同でEV中古電池リユース・リサイクル事業を立ち上げ、資源循環型モデルを構築、(2)中国現地法人を通じたMLCC(積層セラミックコンデンサ)製造設備事業への参入、(3)プラスチックリサイクル事業の拡大、など新規事業開発を積極化している。特に(1)のような世界的なエネルギーシフトの流れを捉えたEV・バッテリー関連事業に注力しておいる。その他にも中国のみならずインドネシアでも電動バイク・バッテリー交換事業の拡大を目指している。同社のアジア向けの事業展開力は稀有であり、それを支える人材の育成のための若手社員の海外出向なども積極的に進めている。こうした盤石の体制で、中国・東南アジア・インドといった大国もしくは人口増加国において化成品事業を拡大していく長期的な成長シナリオが明確である。

株主還元については「財務健全性を維持しつつ連結配当性向50%を基本」とする方針を明示している。今期予想配当は1株当たり配当38円を実施予定で、配当性向は51.3%となる見通しだ。海外進出を加速させる一方、自社株買いも実施しており、成長と資本効率を意識した株主還元を両立させていく姿勢が明確である。足元のPBRは0.9倍、配当利回りは4.5%となっており、投資妙味が高いと言える。

総じて、明和産業は中国を起点とした強固なアジアネットワークと多様な事業ポートフォリオを背景に、安定成長と新規事業拡大を両立しつつある。高利益率商材の拡販や循環型ビジネスへの参入など将来の収益基盤を着実に整備しており、今後も成長投資と株主還元のバランスをとりながら持続的な企業価値向上を実現していくことが期待される。




《NH》

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